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体育倉庫の狂宴~堕落する英語教師~
第9章 9
その後しばらくは、レンヤは黙って、ただ涼子の乳輪を、人差指の先で撫で続けた。

レンヤが黙ると、男子更衣室は沈黙に満ちる。

しかしその沈黙の間もずっと涼子の頭には、ついさっきレンヤが囁いた”スケベ”という言葉が――その官能的な声の響きを保ったまま――木霊(こだま)していた。

――スケベ、スケベ、スケベ、スケベ、スケベ……――

(違うッ――違うわッ!)

涼子の理性は、その“木霊”を必死で打ち消そうとする。

(私は……スケベじゃない!――スケベじゃないッ!)

しかしレンヤの声は、“天”から聞こえてくる――だから涼子は“地”から、天を見上げて訴える。

               ☆☆☆☆☆

可笑しな話だと、涼子は思った。

レンヤが“上”で、自分が“下”にいる。

十八歳が“上”で、二十六歳が“下”にいる。

生徒が“上”で、教師が“下”にいる。

勿論のこと、今の自分がレンヤに屈服しているのは、“弱み”を握られ、“脅迫”されているからだ。

でももしかしたら……もしかしたらもう自分の“理性”ですらも、レンヤに逆えなくなっているのかも知れない。

だって自分の方が“下”にいるのだから……。

               ☆☆☆☆☆

そんな思いが過った途端、涼子の“理性”は“木霊”に対する抵抗を諦めた。

そして涼子は――なおも“天”から降ってくるレンヤの『スケベ』という侮蔑の言葉を浴びながら――ぼんやりと、乳輪を撫でるレンヤの指先を見つめた。

見つめているうちに、ふと思った。

(綺麗な指先……まるで“真珠”みたいね……)
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