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マゾ女調教のなれの果て : こんな生き物にされたいですか?
第9章 謎
「『動物のいない動物園』では一途な女に感じましたけど。」
「物事がうまくいかなくなったとき、追い詰められたとき、そいつの本当の顔が出る。動物園のひよりというのは仮面だったんだろうね。表現者としてはそこで新しい『何か』が出せれば一皮むけたのかもしれないけれど。目の前のつじつま合わせや金、体面、プライド、そんなものに追われ、流されていった彼女はトイレに流されていく汚物と同じだ。」
「なんかえらく俗物ですね」
「俗物なのは悪いことじゃない。俗物を知らなければ俗物は描けない。俗物があるから聖者がある。」
「ああ、劇のためには、ってことですね。」
「僕も俗物だしね。生きる上でもそうじゃないか。女を抱きたいなんて俗物の最たるものだよ。例の女、他には何か言ってた?」
「何かって何に関してですか?」
「何でもいい。ひよりのことでも芝居のことでも人生についてだっていい。今。その女がどんなことを考えているのか気になる。」
「ひよりさんの落魄の人生が楽しみらしいです。」
「苦笑。落ちた花を踏みにじるのは、サディストの権利であって、マゾヒストがすることじゃないけどね。」
「マゾ女がマゾ女に対して強烈なサドであることは珍しくないですからね。」
「そう。妬みだ。おそらく、私に捨てられたことでひよりを恨んでいるんじゃないかな。」
「ひよりさんの前の奴隷なんですか?」
「いや、ただの暇つぶしだ。劇には詳しそうだった?」
「脚本を酷評してましたから、劇というものがある程度は分かるんでしょう。」
「なかなかおもしろいね。あなたのような誰だか分からない相手にひよりのことを言いふらし、私に連絡させるとは。」
「うん、まあ一生、根に持つんでしょうね」
「すべてをひよりと比べられ、すべてが劣ると言ってやった女のささやかな復讐劇だ。今のひよりを知ったらきっと泣いて喜ぶだろう。」
「尻穴まで比べたんですか?」
「もちろん」
「上司と部下みたいなことを言ってましたが先輩後輩の関係があったのかな。」
「私が主宰していた劇団の看板女優と新入団女優だったよ。こうしてあなたからせっかく連絡もらったのでこの復讐劇の主人公からあなたに連絡させよう。」
「おお、それはとても楽しみです。」
劇団主催者の男をめぐる2人のマゾ女優の確執。これは愉快だ。