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cape light
第2章 花火なんて大嫌いなんですよ、僕は
「坂口、お前がそこに立ってると妙な風がこっちに流れてくんのよ」
 なぜか事務室をギンギンに冷やしてくれる家庭用エアコンの送風口前。この場所だけは誰にも譲れない。
 でもって僕をいつも呼び捨てにできる人間は今ここに二人いる。一人は森川玲奈。そして遠回しにそこに立ってんじゃあねえぞ、と言ったその人物は福さんだ。事務所には後二人、店長久須美といっちゃんこと大道一直がいる。
「もうすぐパラダイスの時間が終わるんです。僕はここから一歩たりとも動きません」
「パラダイスの時間てどういう時間なのよ。坂口、昨日飛燕に行った?」
 福さんが言った飛燕とはリサイクルショップlighthouseから歩いて五分のところにある温泉ホテルのことだ。ついでに言えば、福さんは僕が飛燕の日帰り温泉に行ったのかを訊ねている。
「飛燕の日帰り温泉、値上がりしたんです。千円ですよ千円。今の僕には逆立ちしてもそんな大金出せません」
「千円が大金、坂口、お前マジで残念で悲しい男だね」
「福さん、カンパいつでも受け付けてますから」
 僕は顔だけ福さんに向けた。
「それさ、カンパじゃなくてたかりって言うんだよ」
「カンパでもたかりでも僕にはどうでもいことです」
 福さんに向けた顔を僕はクーラーの送風口側に戻した。
「坂口君、君の偉大な先輩が草葉の陰で泣いてるよ」
 店長久須美のその言葉に嫌な予感。
「僕は僕です」
「栄光の背番号3」
 久須美、うっかり? 僕の大先輩の大学時代を飛ばす。
「栄光の背番号3て何です?」
 大道一直の素直な疑問、じゃなくて、いっちゃんお願いだからそこから離れてくれと僕は願う。
「栄光の背番号3とはね」
「店長、別の話があるんですよね」
 ナイスブロック。僕は僕を褒めてあげたい。
「ということでいよいよ明日、長岡の大花火大会です」
「どうしてその花火大会の日にリサイクルショップが屋台を出さなければならないんですか?」
 僕は僕の中で沸騰している極々当たり前の疑問を久須美にぶつけた。
「坂口、いつまでも言ってるんじゃないよ」
「まぁまぁ福さん、坂口君だって話せばわかってもらえると思うよ」
 わからない。わかりたくもない。花火大会をリサイクルショップの屋台で楽しもうなんて企画。もう一つ付け加えるならリサイクルショップlighthouseからは長岡の花火は見えない。
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