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女優なんて…
第9章 村を出てゆく

「どうぞ、お掛けになってください。
早速ですが、身分証明になるものをお持ちですか?」
こちらへ向かう途中に
高速道のSA(サービスエリア)から
訪問したい旨を伝えてあり、
その際に、急なことなので履歴書などは用意できていないことを伝えてあった。
履歴書は後々で構わないので
身分だけ証明できるものをお持ちください。
それが急遽面接をしてもらう約束ごとであった。
「運転免許証でいいですか?」
「ええ、もちろんですとも!」
一応、コピーを取らせてもらいますよ。
私の運転免許証を手にした無精髭の男はパーティションの裏側へ消えてプリンターを操作した。
「大体の事は先輩から聞いています」
プリンターを操作しながらパーティションの向こうから無精髭の男はざっくばらんに語りかけてきた。
先輩というのが役場の助役さんの事なのだろうとピンときた。
「お芝居の勉強をしたいんですか?」
「ええ、ちょっとしたきっかけで興味を持ったものですから」
「それはいい、あなたは器量もいいしスタイルもいいから、あっという間に花形になれるかも知れませんね」
これ、ありがとうございましたと、私の免許証を返すその手で無精髭の男は
「先輩から僕の名刺を受け取ってもらっていると思いますが…一応の礼儀なので」と
真新しい名刺を私に差し出してくれた。

