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女優なんて…
第9章 村を出てゆく

劇団 陽はまた昇る
主宰 近藤彰人
ここへ来るまでに
涼風さんのリムジンの中で
何度も見返した古ぼけた名刺と違って
真新しい名刺を頂くと
少しずつ緊張してきました。
「ところで…演劇の経験は?」
「ありません」
「学芸会などで台詞のある役をいただいたことは?」
「ありません」
「そっか…本当にズブの素人なんだね…
最初はさ、雑用係みたいな事ばかりだけど
嫌気を出さないで頑張って貰えるかな?」
「ええ、もちろんです」
「とりあえず練習生ということで
月謝は3万円をいただきます」
「えっ?お金が必要なんですか?」
「練習生ですからねえ
こちらも慈善事業じゃないので
タダで面倒を見るわけには行きませんから」
そっか…
世の中、そんなに甘くはないと言うことね…
「うちの団員は芝居だけで生活できる奴ばかりではないので、全員が何なりのバイトをしていますよ」
良ければバイト先を紹介しましょうか?
そんなことを話していると
「おはようございます」と
すでに夕刻であるにも関わらず
朝の挨拶をしながら高身長の男が部屋にやってきた。
「お、バイト、終わったかい?
ちょうどいいや、紹介しておこう」
主宰の近藤は、その背の高い青年を呼び寄せた。

