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女優なんて…
第9章 村を出てゆく

「いくらいい女でも
今から唾を付けるのはよろしくないな」

主宰の近藤さんにイヤミを言われて
桐生俊哉さんは顔を真っ赤にして恥じた。

「桐生くん、彼女にバイトを紹介してやってくれないかな?」

近藤さんは桐生俊哉をからかうのをやめて
本題を話し始めた。

「バイト…ですか?」

「ええ、よろしくお願いします」
私は女を武器にするつもりはないが
桐生という男が私に好感を持っていただけるように
可愛らしくペコリと頭を下げた。

「夜のお仕事でも構わない?」
桐生さんは私の目を直接見つめずに
胸元に視線を漂わせながらそう言った。

「それほど遅くならなければ…」

私は一日のスケジュールを頭の中で整理してみた。

起床後、朝ごはんを涼風さんに作って
買い物などを午前中に済ませ
お昼から夕方まで劇団でお芝居のイロハを学び、
夜のバイトをして帰宅後は涼風さんのお相手をして…
うわぁ!めちゃくちゃハードになっちゃう!
でも、早く練習生から抜け出して
劇団のお仕事で稼げるようにならないと…

「あまり夜のバイトは乗り気じゃない?」

私の顔色を伺って
桐生さんは心当たりのあるバイトを紹介するのを躊躇った。

「いえ、大丈夫です
私、体が丈夫なことだけが取り柄ですから」

「よしっ、それじゃあ、バイトの面接に行こうか」

有無を言わせずに桐生さんは
私を劇団の事務所から連れ出した。

そして、連れてこられたのが
小さなバーでした。

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