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女優なんて…
第9章 村を出てゆく

セーラー服を着せられたものの
私の仕事といえばグラス磨きやお皿の水洗でした。

「あんたは可愛いからそのうち接客もしてもらうけど、今夜は初日だし、場慣れする意味合いを込めて裏方で頑張ってもらうわね
いい?漠然と皿洗いしてちゃダメよ
チラチラとホールを見渡して先輩達の接客をよく見ているのよ」

陽子ママの言いつけを守って
私は隙あらばホールを凝視して
ニューハーフ達の接待の仕方を学んだ。

ピンサロのような個室でお客様のアレを舐めたり吸ったりするわけではなく、お触りはあるものの、それはすべてズボンの上からだし、客に触らせるのもショーツ越しでした。
どちらかというとお触りで客を楽しませるというよりは、下品な会話やおどけた仕草で笑いを取り、
お客さまを上機嫌にさせ、ボトルをキープしてもらうという接客でした。

『うわぁ~…ニューハーフの皆さんって博学だし、お客さまの冗談にも切り返しが上手だわ…』

いかがわしいお店のように
ホステスの美貌とスタイルや手淫やお口でのサービスをしない分、頭が良くないと勤まらないお仕事だと理解しました。

夜も更けて、私は涼風さんのお世話をしなければいけないので、お先に仕事を上がらせてもらうとしたその時、お店のドアが開いて桐生さんが顔を出した。

「桐生ちゃん、ようやく来てくれたのね」

彼は陽子ママにとってご贔屓の客なのだろう
一番奥のテーブルに桐生さんを連れていって陣取った。



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