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女優なんて…
第9章 村を出てゆく

「どうだい?僕が紹介したあの子は頑張っているかい?」
桐生さんは店内を見渡して私を探してくれているようでした。
「頑張るも何も、ズブの素人をいきなりテーブルに付かせられるわけないじゃない。
今夜は皿洗いに没頭させているわ」
でも、ちょうどいいわ
桐生ちゃんに練習台になってもらおうかしら
陽子ママは妙案を思い付いたとばかりに
厨房に向かって私の名を呼んだ。
「陽子ママ、何かご用でしょうか?」
私が厨房から顔を覗かせると
お客さまが一斉に私を見てきて
「あの子はニューフェイスかい?」と
あちらこちらのテーブルからニューハーフのお姉さま達に聞いている声が私の耳に届きました。
「優美子ちゃん、ちょっとこっちに来て私のお手伝いをして頂戴」
そろそろ帰りたいと思っていたのに
思いがけずホールに呼び出されて帰るタイミングを失ってしまいました。
厨房から出て、ホールを横切って陽子ママのテーブルに向かう私の姿に各テーブルからお客さまの鋭い視線が突き刺さるのを感じた。
「桐生ちゃんがあなたの最初のお客さまよ
自分の思うように彼を接客してごらんなさい」
口調は穏やかでしたが
陽子ママの目は私の適正を確かめようと
とても鋭かった。

