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女優なんて…
第9章 村を出てゆく

「印税なんて、学費と滞納していた下宿代で
あっという間に消えたさ」
桐生さんは握られた手を振りほどいてそう告げた。
「それだけじゃないでしょ
大学のマドンナに捕まったのが運の尽きじゃないのさ」
「マドンナ?」
「ミスキャンパスとかいう女よ
この子、あの女に骨抜きにされちゃったの
そういえば優美子ちゃんは当時のマドンナに似てるわね」
「その話はもういいだろ!」
桐生さんはおかわりの水割りを
文字通りに水でも飲むように一気にあおった。
その話題から逃げるように
桐生さんは次々と水割りを飲み干した。
私も桐生さんの要望に応えて次々と水割りをこしらえた。
それも陽子ママさんに教えられたように
少しずつ濃い水割りにして…
案の定、桐生さんは酔いつぶれてしまったんです。
「やっぱり昔話をホジ繰り返すのはまだ早かったかしら…
優美子ちゃん、今夜はこの辺でいいからこの子を連れて帰ってあげてね」
そう言われて私は桐生さんの肩を抱くように
お店を後にしました。
連れて帰れといわれても桐生さんは酔いつぶれて
住所さえ聞き出せません。
かと言って二人で涼風さんの部屋に押し掛けることも出来なかったのでホテルに担ぎ込むしか仕方ありませんでした。

