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女優なんて…
第10章 稽古
劇団員の面々から距離を取って
近藤が小声で桐生に問いただす。
「桐生、お前、まさかあの娘を食っちまったんじゃないだろうな?」
「えっ?まさかぁ…そんなことはしませんよ」
「わかっていると思うが劇団内の恋愛はご法度だからな」
「重々に承知してますよ」
「それならいいんだがな…
なんてったってあの娘はお前の元カノにどことなく似ているから心配なんだよ」
近藤とは何度も酒を酌み交わして
過去の恋愛なども暴露しあっていた。
桐生が在学中にミスキャンパスと恋仲になったことも洗いざらい白状していた。
「それにしても似てるよなあ…
ほら、お前の元カノ…なんて名前だっけ…」
「涼風あかねですよ」
「そうそう、今や元カノは飛ぶ鳥を落とさんばかりの人気女優、方や元カレは鳴かず飛ばずの小説家で、弱小劇団の脚本家だもんな…
すっかり差をつけられちまったな」
嘲笑うかのように
近藤は桐生の肩をポンポンと叩いて
「次回のホン(脚本)を早めに書き上げてくれよ」
そう言って思い付いたように
「どうだ?あの娘をヒロインに抜擢してみるか?」と、自分の思い付きに満更でもないようにニヤリと笑った。
私はと言えば
ボイストレーナーの横川あずみに呼び出されていた。
「あんた、お芝居は初めてだって?」
ボイストレーナーとして紹介されたのは
宝○歌劇団に籍を置いたこともある女性でした。