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女優なんて…
第10章 稽古
ボイストレーニングと言っても
私がやらされるのは腹筋運動ばかりでした。
「いい?発声には腹の力がいるのよ
そんなプヨプヨのお腹じゃ話にならないわよ」
汗だくになりながら腹筋をしていると
よく通った声が舞台からしてきた。
明日からは新しい演目の初舞台ということで
立ち稽古が始まったのです。
「よく見てごらん、
あの娘、うちの劇団の花形女優なんだけど…
声があまり通ってこないでしょ?」
言われてみればその通りでした。
多くのメンバーの声はよく通るのに
彼女だけは発声が弱くて、台詞もよく聞き取れない。
舞台に立っている女性はハーフでしょうか、
目鼻立ちがハッキリしていて
とてもチャーミングでした。
「あの娘、見映えはいいけど、トレーニング嫌いで有名でね…
でも、元芸能事務所にいただけあって
男たちの受けはいいのよ
お顔もチャーミングだしね
でも、声が小さいから、せっかくのホン(脚本)も台無しよ」
あなたは、あんな風に仕上げたくないの。
押しも押されぬうちの看板女優に仕上げてみるわ
そんなことを言いながらボイストレーナーの彼女は腹筋をしている私のお腹に手を当てた。
「ほら!もっと力を入れなさい!
ここのお肉が割れるまでしごいてあげるわ」
ここもダメ、ここもプヨプヨじゃないの!
そう言いながら彼女は私の全身を撫でて行きます。
それは筋力を確かめるというよりは
愛撫に近い触り方でした。