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第10章 稽古

「まずは全身運動で体を解しましょうか」

そう言われて私はボート漕ぎのマシンに座らされた。
『よかった…これならそんなにキツくなさそうだわ』

そう思ったのは大きな間違いでした。
ボートの櫂は重く、体を前後にスライドさせるためには座ってスクワットをするようなものでした。

１分とかからないうちに
私は汗まみれになっていました。

「全然ダメね…
あなた筋肉がついているの？
汗まみれになったから丁度いいわ
脱ぎなさい」

ボイストレーナーといっても女性なので
私は脱ぐことにまったく抵抗もせずにトレーニングウェアを脱ぎ捨てた。

「まあまあ！下着までぐっしょりじゃないの！
これじゃ汗が冷えて風邪をひくわ
どう？一緒にシャワー浴びましょうか」

ボイストレーナーの横川あずみさんの言うように
下着まで汗でぐっしょりだったので
シャワーを浴びたくて仕方なかったんです。

渡りに船だとばかりに
「ええ、是非、シャワーを使わさせてください」と
シャワールーに連れていって欲しいと催促しました。

「こっちよ、ついていらっしゃい」

脱衣室に連れていかれて
私は急いで全裸になりました。
横川あずみさんは脱衣かごのウェアや下着を掴むと
そのまま洗濯機に放り込んだ。
「洗濯してあげるわね、大丈夫よ帰るまでには乾くわ」
トレーニングが終わったらもう一度シャワーを浴びてサッパリして帰るといいわ。

彼女の言葉に私は何も疑わずに
「ありがとうございます」と頭を下げた。