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女優なんて…
第11章 陽子ママの誘惑

「ニューハーフをモデルにって…
うちは、女優のメリーを前面に打ち立ててやっていく路線じゃないですか」

「あのハーフの女だろ?
あいつは顔はいいんだけど
酷い大根だからさあ、いつも芝居がワンパターンなんだよ」

メリーという女は
メリー梓川という芸名で
ハーフの女優ということで一時期はそこそこ売れてチヤホヤされたけれど、セリフが英語なまりで発音がよろしくない上に、それをカバーする演技の表現力も皆無であった。

近藤主宰の劇団の中には
メリーを目当てに足繁く通ってくれるファンもいるが、
タニマチのポジションを狙って
いつかはメリーを抱いてやろうという奴ばかりだった。

「この際、メリーには主役を降りてもらおうと思っているんだ」

「えっ?それは聞き捨てならないなあ
すでに下書きを終えてる次回作も
メリーをイメージして書いているんですけど」

「お前はワンパターンのホン(脚本)ばかりでいいのか?才能がどんどん失っていくぞ」

「でも、メリー以外に華のあるヒロインがうちにはいないじゃないですか!」

「やっぱりお前の目は節穴だな
いるじゃないか、とびっきりのニューフェイスが…」

そう言って近藤は
優美子が洗い物をしているであろう厨房の扉を凝視していた。

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