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第12章 涼風あかねと安岡健一

それにしても
どうして涼風あかねはこんなにも安岡健一を毛嫌いするのだろうか？

芸能界の裏情報では
安岡の女癖が悪く、数々の女とモメているという話も聞こえてくる。
スキャンダルにならないのは
バックについている大手事務所が
裏から手を回して小火(ぼや)のうちに火消しをしてしまい相手の女を黙らせてしまうとか…

そんな小ネタを涼風あかねも察知しているがゆえに
安岡を嫌っているのかもしれないと考えた。

だが、当の涼風あかねの胸中はそんな単純な事ではなかった。

あれは涼風がデビュー間もない頃だった。
涼風を売り出すために事務所はなりふりかまわず
涼風をバラエティーの末席に座らせた事もあった。
そんなバラエティーで顔を合わせたのが
当日絶大な人気を誇るアイドルグループに参加していた安岡健一だった。

事務所は涼風の売り込みのためにバラエティーに出したものの、
当の本人はバラエティー番組の事など右も左もわからない状態だった。
「大丈夫だよ、失言があっても僕がフォローしてやるから」
バラエティー番組の休憩中に安岡は言葉巧みに涼風に取り入って、『安岡さんは好い人』という気持ちを植え付けた。

さりげなく「連絡先を交換しないか？」という誘いに涼風あかねは何の抵抗もなくメールアドレスだけでなく、マンションの場所まで教えてしまっていた。