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女優なんて…
第12章 涼風あかねと安岡健一
休憩を挟みその続きから撮影を再開。
次はSEXシーンの撮影だ。
演技上だが、女は喘ぎまくらなければいけない。
不意に安岡が掛け布団を捲りあげた。
涼風あかねの裸体が露になった。
「ストップ!ストップ!
ダメダメぇ!!」
マネージャーの樹(いつき)がバスローブを手にして
あかねの裸体を覆い隠すように被せた。
「全裸をさらけ出すなんて聞いてませんよ!
これは事務所的にアウトです!」
スタッフ全員を敵に回しても
涼風あかねの裸体をカメラに収めることは許さないと樹(いつき)が真っ赤な顔をして立ち向かってくれた。
「おいおい!何、撮影の邪魔してくれるんだよ!」
そいつを摘まみ出せと
大白川監督が珍しく声を荒げて樹(いつき)を罵倒した。
「いいえ!いくら巨匠と言えども
こればかりは無理です。うちの女優をこれ以上晒し者には出来ません!!」
「ふん…仕方のない坊やだ
心配するな、ボカシをちゃんと入れてやる
俺はなぁ、この作品に全身全霊を込めているんだよ!
なまっちょろいセックスシーンなんて
撮りたかねえんだよ!」
巨匠の剣幕にスタッフの誰一人として
樹(いつき)の味方になってくれるものはいなかった。
「いいんです…樹(いつき)さん、ありがとう…
私、深雪という役柄をちゃんと演じて見せるわ
私のヌードを目当てに観客動員が増えるのなら
こんなの何でもありませんから!」
安岡に女優が本気になれば何だって出切るのだと誇示したかった。
「でも、事務所的には…」
「ボカシを入れてくれるんですよね?
だったら、ベージュのビキニを着てましたと
事務所には言い訳すればいいじゃないですか!」
樹(いつき)は、涼風あかねという女優が
一つの殻を打ち破って成長してゆく覚悟を感じ取った。
「わかりました…
本人がいいと言うのであれば…
私は引き下がります…」
樹(いつき)は、歯を食い縛って自分の非力を情けなく思った。