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女優なんて…
第1章 ロケ隊がやってくる

『もしもし?そちら、大沢村役場の広報課でよろしいでしょうか?』

久方ぶりに聞く標準語…

訛りや方言のない言葉を聞くと
心なしか学生時代に戻ったようで
背筋がピンと伸びた。

「はい、こちらは大沢村役場の広報課でございます」

私も負けじと標準語で対応した。
地方公務員として襟を正した。

『突然のお電話、申し訳ございません
こちらは日官映画株式会社でございます』

最近でこそ聞き慣れない映画会社となってしまったけれど、東○、○映、松○といった三大映画会社に比べてかなり規模は小さいけれど
れっきとした映画会社なのは私も知っていた。

ただ、近年は方向性を転換して
やけに濡れ場の多いピンク映画専門のような会社になっていた。

「えっと…映画会社がどのようなご用件でしょうか?」

『いえね、久しぶりに巨匠の大白川監督がメガホンを持つことになりましてね…』

大白川監督といえば
大白川竜聖の事だろうか?
彼は昭和の後期に数々の名作を世に打ち出して
映画賞を総ナメしたこともある監督で
電話の主があえて巨匠と敬称をつけたのも納得できた。

「大白川監督って…もしかして大白川竜聖監督でしょうか?」

『ご存知でしたか、それならば話が早い。
巨匠は次期映画のロケ地にそちらの村はどうかと、そんな話が立ち上がりましてね』

映画のロケ地?
これこそ、村起こしの話題にピッタリだわと
私は心を弾ませました。

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