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女優なんて…
第6章 本番
「あのさあ…一つ提案なんだけども…」
埒の明かない言葉の応酬に
安岡は学生のように手をあげて発言の許しを請うた。
「何?」
言いたいことがあるんなら
さっさと喋れよと
苛立ちを含んだ口調で大白川監督は安岡を睨んだ。
「あのさ…この際、裸は別の女でもいいんじゃね?
ほら、喘いだり、悶える表情だけアップで彼女を別撮りすりゃいいじゃん」
「つまり…影武者を使えと?」
それも一理あるなと
大白川は一瞬そう思ったが
「ダメダメ!今からAVの女を呼び寄せても
今日中にはこっちに来てくれないんだから
俺はさあ、今日、この時に濡れ場を撮りたいんだよ
わかる?クリエーターの心情なんてお前ら役者にはわかりっこねえんだろうけどさ」
大白川監督は安岡の妙案を即座にダメ出しした。
「別に呼び寄せなくてもいいじゃん
ここに涼風さんと同じぐらいの背丈と歳の近い女がいるじゃん」
安岡は、そう言って撮影を覗き込んでいる私に
とてもいやらしい視線を送ってきた。
「あん?何だって?…」
大白川監督も安岡の視線を追うように
私を見つめ始めた。
「了解取れんのか?」
私を見つめて何度かウンウンとうなずくと
大白川監督は安岡に「彼女を口説いてみろ」と
安岡の提案を全面的に指示して
彼に私への出演交渉を任せた。