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女優なんて…
第6章 本番
安岡さんが一歩、二歩と私に近づいてくる。
歩みを進める度にスタッフが後ずさりして
私との間に十戒の海が割れるが如く人波が割れて
私への一本道を作ってゆく。
障害物の無くなった花道を歩くかのように
安岡さんはスタスタと私の前まで歩み寄った。
「えっ?…
あの…何でしょうか?…」
何やら不穏な空気を感じ取って
私は気圧されて体を小さくした。
「君…映画に出演してみない?」
「映画に?…」
「ほら、村の人たちもエキストラで何らかの形で映画出演してるじゃない。
君も広報として頑張っているんだから出演するべきだよ」
「はあ…」
通りすがりの村人Aでない事は確かだ。
こうやって主演男優直々に話を持ってくるということは、それなりの役をいただけると言うことなのでしょう。
「ね、出演しなよ
きっと、良い思い出になるからさあ」
私の瞳を覗き込むように
顔の前で端正な顔を近付けられると
昨夜のテレフォンセックスの事を思い出して
ドキドキしてしまいました。
「はい…」
彼の瞳の輝きに魅了されて
私は何も変えずに了解の返事をしていた。
「監督!彼女、オッケーだそうです」
いい子だねえ、と
安岡は私の肩を抱いて
大白川監督の元へと導きました。
「やってくれるかね?」
どんな役なのかもわからないまま
私はコクンと首を立てに頷いていた。