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女優なんて…
第6章 本番

「立ち位置、ここでオッケーですかぁ?」

安岡が大白川監督に確認すると
「はいよ、バッチリだよ」と監督がOKサインを出すと、安岡はおもむろに私に抱きついてきた。

「さっきのシーンからの続きだからね」

小声でそう言うと
「声、出してもいいんだよ
音声は涼風がアテレコするからさ」

そう言ったけれど、台本にはセリフなど書かれていないのだから、
私は声など必要ないのに…と
怪訝そうな顔をした。

「代役さぁ~ん、なるべく涼風に似せてみたけど
それでもカメラの方はなるべく見ないでくださぁ~い!」

助監督がそう言いながら
カメラマンに「頼むよ、腕の見せ所だからね」と
カメラを覗き込む男に念を押した。

「わかってますって…
こっちはこれで飯を食ってんだ
任せておけって!」

「よぉ~し、じゃあ、続きをやってみようかぁ!」

大白川監督がそう言うと
再びガチンコがカメラのレンズを遮るようにセットされた。

「シーン143!」

助監督の号令でガチンコがガチャンと打ち鳴らされた。

「深雪…君の全てを僕にくれないか」

誠二役の安岡が大胆に私にキスをしてくる。
先ほどのシーンの続きなのだから当然でした。

しかし、そのあとで
私の背中を抱いていた安岡の手が肩へと回り
スルスルと胸元へ伸びてきたんです。


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