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女優なんて…
第1章 ロケ隊がやってくる
「ほらぁ!有明くん!
何をボーッと突っ立っているんだね!!」
村長に一喝されて
私はハッ!と自分を取り戻した。
村長と助役さんが慌てて大白川監督の元へ駆け寄っていた。
私もワンテンポ遅れて二人の後ろに陣取った。
「これはこれは、大白川監督!
この度は当村をロケ地に選んで頂き光栄でございます」
ロケには否定的だった村長も
このロケ隊を村に迎えて上機嫌でした。
食堂を営む関川さんも
パン屋の添山さんも遠巻きにロケ隊を眺めて満面の笑みをうかべている。
きっと彼らの頭の中には何日間はロケ隊の食事などで儲けることが出来ると
捕らぬ狸の皮算用を見込んでいるのでしょう。
「ええっと…あなた達は?」
駆け寄ってきた私たちに大白川監督は
警戒した顔つきでそう言った。
「申し遅れました…
わたくし、この村で村長をしております吉村と申します」
「私は助役の佐藤と申します」
二人は仰々しく名刺を大白川監督に差し出した。
「ふぅ~ん…、で、あなたは?」
黒のサングラスで目の動きはわからないけれど
私は監督の鋭い視線を感じました。
「あ…この村の役場で広報を勤めております
有明と申します」
私も村長と助役さんに倣って
この職についてから初めて名刺を誰かに手渡すことが出来ました。
監督は両手の親指と人差し指で
四角いフレームを作り出すと
そのフレームの中から私をニヤニヤしながら見つめた。