この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
目覚めたのは 公園のベンチ
第28章 追われる 時
・・ア・・ナ・タ・・
目を開けると裕子が手を握り 涙が手に零れ落ち濡れていた
裕子の後ろに井上の姿も見え 白い天井が和夫を目覚めさせた
「寝てた?」
起き上がろうとして 体の節々の痛みに思わず呻きを上げ
裕子が慌てて 体を支えて呉れ
スナックへ飛び込んで来た車に はねとばされて 頭を打ち
病院に搬送され 2週間 昏睡状態だったと聞かされた
ママはと聞くと お店は壊れたが ママとお客様は奥の席にいて
無事だったと お店が壊れたことを機に ママは お店を閉め
その後の消息まではと 裕子が言ってきて
和夫は天井を見つめ ママと初めて手を握った時の
感触を 思い出そうとしていた
裕子と話している時 白衣を着た医師が病室へ入って来て
聴診器を取り出し胸に宛て ライトを和夫の目に当てると
顔を右左と動かして 明日細かな検査をしましょうと
裕子に会釈をすると出て行った
翌日和夫は車いすに乗せられ 幾つもの検査を受け
後1週間ほどは入院しているようにと言われ
裕子に パソコンを持って来て貰い
ベッドの上で 陽菜達の追記を仕上げ
連載の続きも 仕上げて行った
夢の中で家に帰った時 書いたものが 残って居るかと
密かに思っていたが 残念な事に保存を幾ら探しても
かけらも無く 和夫は少しづつ 思い出して
寺田夫妻の後半の人生を描き始め 約束通り借金を返済し
新しく工場を再建し
郁代の手綱の下で 健司は伸び伸びと仕事に精を出し
幸せな夫婦生活を 送れるように書き終わらせて
井上を呼び 自分の作品の追記を頼んだ