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夏の対価
第1章 夏の対価
 ああ、なるほど。

 財布から100円と数枚の10円玉を取り出し、自販機へ。アイスコーヒーのランプが点灯している。
 
 怪訝な顔をしている女の横から手を伸ばし、コイン投入穴へ100円と10円を入れる。ゴンと、缶コーヒーが落ちてきた。

「ちょっと。なにするのよ」
「暑いですね。僕のおごりです。気にしないでください」
「は?」

 暑いので構わず行こうとしたら「ちょっと」と肩を掴まれた。

「おごられる理由がないわ」
「あなたは冷えたコーヒーを買おうとした。でもこの自販機はコインだけで紙幣は使えない。あいにくコインを切らしていたあなたはガッカリして舌打ちをした」
「確かにそうだけど」

 美人だなあと思いつつ、僕は暑さにうんざりしながら続ける。

「困ってる人がいたら助けろという父の遺言に従っただけです」
「遺言?」
「ええ。それじゃあこれで」

 
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