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駆け込んだのはラブホテル
第2章 鍵
部屋の中で、案外普通なんですね、とはしゃいでいる桜木には、どうやら聞こえていない。
守屋の額に冷汗が流れた。
やばい。
桜木さんがこちらに来ないうちに、何とかしないと。
ドアを調べる。
見た目通り、どこをどう探っても鍵らしきものは見当たらなかった。
ノブは回らない。ポストは開かなかった。恐らく外側から押し開ける形なのだろうということだけわかった。
隣の清算機に目をやると、すぐに答えは見つかった。
清算機の最上部に、ラミネート加工された貼り紙があった。
『清算を済ませると、開錠いたします。』
そうなのか……。
しかし、清算なんていつしても構わないだろう。だったら今、自分のお金で払って。
『清算後は、速やかにご退室くださいませ。ご利用ありがとうございました。』
頭を抱えた。
ハイテク。そういうことか。
「どうしたんですか?」
なかなか戻ってこない守屋を心配し、桜木がひょっこり顔を出すと、そこには地べたにしゃがんで頭を抱える哀れな二十九歳の姿があった。
「桜木さん、ごめんなさい……」
「え、どうしたんですか」
桜木が守屋の傍に来て、守屋を覗き込むようにしゃがむ。
「僕、出られません……」
桜木は、それを聞いてもきょとんと首を傾げるだけだった。