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駆け込んだのはラブホテル
第2章 鍵
桜木が、部屋の奥のソファの脇に、スーツケースを転がしていって倒して置いた。
守屋は、腰を落ち着ける気はないので、玄関の近くにスーツケースを立てたまま。
「傘、エントランスに干しますね」
「ああ、はい、僕もそうします。短時間ですが」
桜木が、玄関に引き返して、扉を塞ぐように傘を広げて置いた。
部屋の隅でスーツケースとビジネスバッグを拭いた守屋が、桜木と入れ違いに自分の傘を持って入り口に戻る――
そこで違和感を覚えた。
ドアの近くに清算機。自動的に鍵が掛かったドア。飾り気のない、ポストのような穴があいたシンプルなドア。
フロントはないので、当然ながら、ルームキーなどは渡されていない――
「このドアって、どうやって開けるんだ?」
思わず独り言が漏れた。