『駆け込んだのはラブホテル』第15章「入浴剤」 121ページ - 無料で読める大人のケータイ官能小説

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駆け込んだのはラブホテル
第15章 入浴剤



「し、失礼します……」



 守屋は恐る恐る、風呂のドアを開けた。

この部屋の風呂のドアは、出張の夜と違って、プラスチックの凹凸で中が見えない仕様になっていた。
ドアを開けると白い湯気の向こうに、タオルで髪を包んだ桜木が見えた。



「どうぞ」



 桜木ははにかんで小さくそう言った。
肩から下は、白濁したお湯の中に浸かっていて、何も見えなかった。
守屋はほっとして、洗い場に入った。



 先に風呂に入ろうとした桜木が入浴剤を見つけ、姿が見えないならと、守屋を誘ったのだった。
乳白色のお湯に身を沈めた桜木は、守屋はまだすぐには湯船には入らないとわかっているはずなのに、体育座りで隅に小さく縮こまっていた。



 何なら昨夜より素肌は見えていなくても、その姿は、守屋にとっては充分官能的だった。
咄嗟に守屋は桜木に背を向けながら、シャワーで体を洗い流した。



「桜木さん、寄ってもらっていい?」



 守屋は、すでに湯船の端に小さくなっている桜木に声を掛ける。
桜木がますます体育据わりを小さくするのを手で制して、身振りで前に進むように示した。
桜木は不思議がりながらも指示されたとおりに体を動かす。白い水面に波が立ち、桜木の肩が見え隠れする。
守屋は桜木の背中側で湯船に足を入れ、そのまま桜木を両足で挟むように座った。



 桜木のうなじに、後れ毛が貼り付いている。



「……そっちなんですね」

「嫌?」

「嫌じゃないけど」



 桜木がもぞもぞと動き、肩越しに守屋を振り返る。



「顔が見えないなって」

「それはちょっと我慢してもらえない? 俺も我慢するから」

「どうして?」

「顔見ちゃったら――桜木さんに、また無理させちゃうと思う」



 守屋は言葉を選んでそう言って、桜木にまた前を向かせると、その首筋に小さく触れるだけのキスをした。



「……守屋さん、」


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