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駆け込んだのはラブホテル
第3章 秘密の共有



「ええと、つまりですね」

 動揺する守屋に、桜木が部屋にあったグラスで水を注いでくれた。
グラスを両手で持ち、守屋がソファの端に腰掛ける。
自らもグラスを持った桜木が、ソファの反対の端に座った。
もちろん、適切な距離を保って。


いや、適切以上の距離を開けているようにも見える。



「どうしてハイテクかと言うと、顔を見られたくない人がいるからですね」

「顔を見られたくない」

 桜木が復唱する。

「こういう場所ですから。このホテルを利用したことを知られたくないような人のために、誰にも顔を合わせなくても、チェックインからチェックアウトまでできるようになっているわけです」

「お忍びのお付き合いとかですか?」

「そうですね、健全でないお付き合いである場合とか」

「浮気とか」

「不倫とか」

「なるほど」

 桜木とこんな話はしたくないが、今は致し方がない。
守屋は、手の中で揺れる水だけを見つめながら続けた。


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