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駆け込んだのはラブホテル
第3章 秘密の共有



「それで、人がいないのにどう経営するかというと、部屋に清算機を置いて、清算しないとドアが開かない仕組みになっているわけです。それで、清算されると自動的にドアが開く」

「それで、ドアが開かないとおっしゃっていたんですね」

 桜木は案外落ち着いていた。

「はい。清算をしてしまえばドアは開きますが、チェックアウトした記録がスタッフ室に飛ぶんでしょう、お掃除の人が来たり、恐らくさっきのエントランスのタッチパネル上で、表示が空室になってしまうのではないかと」

「そういう仕組みなんですね」

 桜木がうんうんと頷く。
平常心を装っている桜木が、実際どう思っているか、守屋には推し量ることができなかった。



「ここまでの失敗をして、もう隠しておけるものではないので、恥を忍んで言います。僕、その……ラブホテルという場所に足を踏み入れるのがはじめてなもので」



 というか。

 齢二十九にして、今回の出張で、女性とふたりきりで過ごす時間の最長記録を更新していた。



 俯く守屋に、桜木が返した。

「恥なんて言わないでください。私もはじめてです。私こそ、システムも把握してない場所に、とりあえずで入ってしまってすみません」

 さっきからの言動で、そうではないかと守屋も薄々勘づいていた。

「まあ……大学時代から独り暮らしだと、ラブホテルなんて使うタイミングないですよね」

「いえ、そうではなくて」

 守屋が横目で桜木を見ると、桜木は、頬を赤らめて目を伏せた。



「男性とお付き合いしたことがないんです」



 守屋は目を見開いた。



「お恥ずかしいことですが」

 もにょもにょとそう言う桜木に、


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