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駆け込んだのはラブホテル
第8章 満員電車は不可抗力?
顧客訪問は何事もなく終わった。
桜木の口数が少ないような気がしたが、桜木はもともと上司や先輩がいる顧客訪問ではあまり出しゃばらないので、口数が少ないというのは、ただの守屋の被害妄想かもしれなかった。
新宿で解放されたのは午後四時だった。
「新幹線は、何時でしたっけ」
桜木は、至っていつも通りに接しようとしてくれていた。
嫌でも一緒に時間を過ごさなければいけない今日の間、わざわざ気まずい雰囲気を作って桜木を苦しめるのは悪手だ。
桜木がそのつもりでいてくれるなら、誠意を見せるのはこの出張が終わってから、と守屋も何とか割り切って、努めて普段と同じように桜木に答えた。
「ええと、六時半です。訪問が長引いてもいいように遅めにしたんですが、時間余っちゃいましたね」
「移動を除いても、一時間半ぐらいはあるんですかね」
「先に東京駅に移動してもいいですが、どうします?」
「お土産は買いたいと思ってます。その時間が確保されるなら、何でも」
それなら折角だからと、ふたりは新宿で、今日の午前中に回ろうと思っていた同業の店などを視察し、電車に乗ったのは五時だった。
電車に乗ってから、もう少し早く移動を済ませておくんだった、と後悔してももう遅かった。