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駆け込んだのはラブホテル
第8章 満員電車は不可抗力?



「東京の満員電車って、こうなんですね……」

「時間、ミスりましたね。通勤ラッシュは避けるべきだった」

「私、いつもの通勤電車のこと満員って呼ぶのもうやめます」



 すでに満員なのに、まだまだ乗車しようとする人に押され、守屋と桜木は、開くドアとは反対側のドアに押し付けられていた。
退勤する勤め人の群れの中で、スーツケースを持った守屋と桜木は、完全にお邪魔虫だった。

 守屋は、桜木だけは何とか守ろうと、桜木をドア側へ誘導し、自分が壁になることを試みる。
しかし、その背を更に押す人々に屈して、とうとう桜木の横に手をついた。



 もはや地面についているか怪しい足も、できるだけドアと床の境目に突っ張って、何とか桜木の空間をあけようとする。
しかし、東京駅まであと何分だか、持ちこたえそうにない。
筋肉がぷるぷると悲鳴を上げる。
あと一ミリ押し込まれれば、桜木に触れてしまいそうだった。



「守屋さん、大丈夫ですか」

 桜木が、守屋の耳元で囁いた。

「ええ、まあ」



 守屋はやせ我慢を言うが、耐え切れないだろうということは、桜木の目にも明らかだった。

「もっとこっち来ても大丈夫ですから」

「……そうは言っても」


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