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駆け込んだのはラブホテル
第9章 帰りたくないと言ってくれ



「やっぱり、私って出張向いてないんですかね……」

 不幸は最後の最後まで襲ってきた。



今日は直帰の予定だったのだが、新幹線を降りて、そこから地下鉄で移動した先の地元の小さな駅から、同じローカル線に乗るまで、二人の帰宅ルートは一緒だった。
問題は、一つの駅のはずなのに、地下鉄からローカル線に乗るのに傘を差す必要があることだった、

「いや、これは、桜木さんではなくて僕でしょう」



 守屋の傘が、折れた。

 間に合わせのコンビニ傘を長年使い倒していたので、そろそろとは思っていたところだった。



「それより、折角東京で雨が上がったのに、こっちでまだ降っていることに文句を言いたいですね」

「梅雨前線はまだしばらくいるんですかねえ」



 桜木も、屋根の下から空を見上げる。
一歩先は、傘なしでは流石に歩きたくない降りようだった。


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