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駆け込んだのはラブホテル
第11章 人生初デート
週が明け、二人は通常通り勤務にあたった。
出張の報告は主に守屋がした。
本当ならば、桜木が書類を作って守屋がそれをチェックという手順を踏んだほうが桜木の練習になるとはわかっていたが、守屋は今だけは人前で桜木と言葉を交わすのは避けたかった。
出張の夜のことを思い出してしまうし、週末のデートのことを考えてしまうし、そんな守屋の態度を不審がって、同僚たちに勘繰られる不安もあった。
それは桜木も同じで、二人は机を並べながらも極力お互いに話し掛けずに一週間を過ごした。
待ちに待った土曜が来た。
デートスポットは、必然的に駅前の繁華街になった。
遊園地や動物園などのアミューズメント施設も考えたが、桜木の趣味がわからなかったので、いざとなったら他の選択肢に切り替えられる場所、といえば、この小さな町では駅前以外に候補がなかった。
知り合いに見つかる可能性も考えたが、それより今回のデートを失敗にしないことのほうが優先事項だった。
集合場所に現れた桜木は、いつものスーツ姿と違ってカラフルなパステルカラーのサマーニットとロングスカートで、肌の露出は少なかったので守屋はほっとした。
職場では一つに束ねている髪は下ろして、緩く巻いている。
守屋も守屋で服装は一生懸命に選んできたつもりだったが、桜木に会った瞬間に自信を失くした。
蒸し暑かったが、幸い雨は降らなかった。