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駆け込んだのはラブホテル
第2章 鍵
「ハイテクですねえー」
ここがラブホテルであることを忘れさせるような桜木の声に、守屋は救われる。
入室を決めると自動的に降りてきたエレベーターの内部には、行き先ボタンはなかった。
自動的に十階まで送られ、着いたフロアでは、我々が入るべきドアの上でランプが点灯していた。
部屋に入ると、自動的に鍵が掛かる。そして、部屋のドアの内側には、清算機。
「ハイテクですね」
守屋も、そう言った。
打って響いたように、桜木が、真似しないでくださいよと冗談めかして拗ねた振りをした。
部屋は案外広く、値段も他の部屋に比べてワンランク高かったので、だから売れ残っていたのかもしれない。
玄関と呼べそうな狭いスペースからドアを隔ててすぐ寝室スペース。中央に大きな白いダブルベッドと、その奥にローテーブルとソファがあった。
ベッドの上には、白い寝巻きが並べて置いてある。脇にある二枚のドアは、恐らくトイレと浴室だろう。室内は白く明るい光で満たされていて、壁はシックなグレー、床はブラウン系の絨毯。
ベッドの枕元に、無駄に細かい調整の効くライトのスイッチと、ボックスティッシュと正体不明の黒い箱があることと、窓がないこと以外は、普通のホテルと変わらなかった。
別に、壁が一面鏡張りだったりはしないらしい。