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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第3章 抱かれたい理由
こちらとしては決して強がりではなく、彼女から色香のようなものを感じることはない。そもそも彼女自身がある程度、意図的に控えているような、そんな気がしていた。このキャラが天然かどうか、怪しいところである。
俺の不快さを隠さない眼差しに対し、夏輝さんは愛想笑いで応じた。
「もう、そんな怖い顔しないでくださいよぉ。プチなアクシデントですっかり失念していましたが、用ならちゃんとありますから」
俺の朝立ちはアクシデントかよ……。この子といるとツッコみのスキルが自然と身につきそうだが、本意ではないので極力脳内に留めることにした。
「それで?」
「ハイ! 実はワタクシ、他の三名からコミュ力を買われ、ここに交渉にやって来た次第であります!」
意味不明の敬礼ポーズは、当然ながらスルー。
「交渉とは?」
「それがですねー。本日はメンバー全員で付近の観光名所を回ってみようかなー、なぁんて話しておりましてぇ」
メンバーとか、アイドルグループじゃあるまいし。それはともかく、甘えた口調から既におおよその用向きは察することができた。
「断る」
「ええっ! まだ、なんにもお願いしてませんよぉ!」
「今日丸一日、俺に観光案内させる腹積もりだろ? 流石にそれはつき合い切れないぞ。タクシー呼んであげるから、あとは勝手に行ってくれる」
「そんなぁ!」
「当然だろ。ここはペンションじゃないし、俺にだって予定というものがあるんだから」
深夜まで、かじりついていたデスクの上に目を向けた。目指すは再来月締め切りの新人賞。遅くとも来月頭には、初稿を上げておきたかった。
もちろんプロではないので、書くか書かないかは自分次第である。胸の内で今が勝負所と位置づけるだけに、無駄な時間を費やすことは極力避けたいところだ。