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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第3章 抱かれたい理由
考えてみれば、妙な空間だった。
「……」
決して窮屈な車ではないが、そこはかとなく息苦しく感じる。男一人と女四人。その割合に対しては今更だとしても、やはり真面ではないのだ。
助手席に座り窓の外を眺めている高坂文水とは、昨夜あんなことになったばかり。それだけでも十分すぎるインパクトである上に、その前の夜に俺は、この内の誰かを抱いてしまっているのだ。
その相手が高坂文水であるのなら、言い方は悪いが、いっそ話はシンプルに思えるかもしれない。だけど、昨夜の彼女の様子からして、逆にその可能性は低いと感じた。あんな風に迫ってきた彼女が、前の晩のことを黙っている理由がない気がしている。
だからといって、じゃあ誰が? 一人一人聞いてみたら、とそんな声が聴こえてきそうだが、鎌をかけて外した時のリスクを考えれば、よほどの確信がなければ難しいように思う。仮に高坂文水でなかった場合、この車内の半数とは既に肉体的な接触を持ってしまったことになる。考えるほどに、車内の空気が重くなるようだ。
もちろん、瑞月のことは可能性から除外している。実の妹でないとはいえ、当たり前のことだ。だとすれば、残りの二人のいずれかが? 否、しかし――。
「……」
赤信号で停車したタイミングで、ミラー越しに後部座席を眺めてみる。
夏輝木葉の方は、はっきり言ってようわからん……。朝の一件で改めて感じるのは、彼女の行動自体が不可解すぎるということ。持ち前の明るさと無邪気さから一番なさそうだと除外していたが、思考が読めないだけに可能性がゼロとは言い切れないのかも……。
そうなると消去法で残るのは、松川土埜ということになってしまう。一番大人しそうなタイプの彼女が意外に――そんな風に思いながら、ミラーの中に映るふくよかな胸元につい視線が向かった。