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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第3章 抱かれたい理由
あとはチャペルウェディングで話題の教会とか、その他景観の良好な博物館や美術館といったところは思い当たるが、彼女たちがそういった場所に興味を抱くかは未知数だ。
そもそも地元民面して、案内してあげようという考えが既に邪である。彼女たちにせよスマホで得た情報を元に、あとは好き勝手に行きたい場所を述べてくれるはず。俺はそれに従って、車を走らせればいいのだ。
あーあ、マジでこんなことしてる場合じゃないんだけどね。
「はい。到着」
とりあえず最初の目的地側の駐車場に車を停めた。小川沿いに遊歩道を進んでいくと、徒歩10分ほどで岩肌から湧き出す滝の姿を一望にすることができる。
滝の落差は数メートルのことだが、横一面に広く降り注ぐ白糸のパノラマは絶景。水の透明度も高く夏でもひんやりと涼しいこの場所には、俺も以前に訪れていた。
「やったぁ! マイナスイオン浴びまくりー!」
最早期待を一切裏切らず、というべきレベルのリアクションを示し、夏輝さんは松川さんの手を引くようにして、遊歩道に駆け出して行った。その後を他の二人が続き、俺は更にその後を間隔を置いて歩いた。なんとなくだが、一緒に歩くのは気が引ける。
そうして背後から観察している(つもりはなかったが)と、肩を並べた瑞月と高坂さんが言葉を交わしている様子を目にした。昨日までならその限りではないが、高坂さんから他の三人との関係性を聞いた今だと、それを意外にも感じてしまう。
なんだよ。やっぱり、そこそこ仲いいんじゃないのか。それとも――。
「……?」
二人が交互に、ちらちらと背後の俺を振り向くようしている様子が、どうにも気にかかっていた。
すると、一人歩調を緩めた瑞月が、なんとなく俺に並びかけてくる。
「どうしたんだ?」
と、聞くと。
「ううん。別に」
素知らぬ顔で、瑞月は言う。
そのまま川のせせらぎを耳にしながら、しばらく歩いていると。
「わ、悪かったね」
唐突に、瑞月は言った。
「なにが?」
「だって……今日は、なんか急につき合わせちゃったし。小説、書かなくちゃいけないんでしょう?」
一体、どういう風の吹き回しだろう。こっちに来て、はじめて見る瑞月の殊勝な態度に、思わず面食らった。