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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第1章 夏のはじまりは刺激的に
友達三人の名前と第一印象を一応おさえたところで、ふと一人ソファーに腰掛けている瑞月のことを気にかけた。もちろん紹介の方は不要だが……。
「さっきから、なに?」
「別に……」
俺に対して、まるで不機嫌さを隠そうとしない。滞在中ずっとこの感じだとすると、先が思いやられる。そんな態度なのに、どうしてここに来たんだよ。つい言いたくもなるが、他の三人の目もあるので控えることにした。
とりあえず、こちらからも挨拶を。俺はコホンと咳ばらいをする。
「ええ――皆さん、いらっしゃいませ。瑞月の兄の岸本涼一(きしもと りょういち)といいます。ここでは自由にくつろいでもらえたらと思っています。一応は管理人ということになっていますので、なにか困ったことがあれば、遠慮なく言いつけてください」
と、余所行きの作り笑顔で心にもない挨拶を口にする自分を、やや気持ち悪く思う。しかし元来、人嫌いな俺としては、ある程度自らを偽らないと、とてもこんな状況を乗り切れるものではなかった。いわば、こういった態度は俺なりの武装である。
「それで部屋の方なんだけど、二階にはシングルとツインの客間がそれぞれ一室ずつ。あと一階の八畳の和室も使えるけど、どうしようか?」
「ちなみに、お兄さんはどちらに?」
と、夏輝木葉さんに聞かれた。
「俺は地下に書斎があって、寝泊りもそこでしてる」
「えっ、地下ぁ? すごーい!」
「いや、別にそんなに大したものではないけど……」
いちいち感心してくれる夏輝さんには、今後も調子を崩されそうだと感じた。
「じゃあ私、シングルで」
いち早くそう宣言して、荷物を手に階段を上がり始めたのは、ギャルっぽいイメージの高坂さんだ。
「あ、そっちのドアだからね」
彼女が階段を上がったところで、下から部屋の方向を指さした。
「どーも」
高坂さんはそれでも軽く片手を上げ、そのままシングルの客間に入っていった。どうやら、かなりマイペースなタイプのようだ。他の三人も承知しているらしく、彼女に対し文句が出ることはなかった。