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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第3章 抱かれたい理由
瑞月の真意はわからないが、話を聞いて鬱屈とした想いが心を満たす理由については、自分自身が一番わかっている。それは瑞月が口にした「何事もなく」という部分について、既にそれに反しているという自覚があるからに他ならない。
どう反しているかについては、改めて述べるまでもないだろう。問題なのは俺に対するなんらかの信頼が上がったからこそ、瑞月の機嫌が上向きであるらしいという点。そこに酷く納得がいかないだけに、一層のこと気分が晴れなかった。
実際の現状をしられてしまった時に、失望を浮かべた瑞月の顔が容易に想像できるからこそ……。
「!」
少し前を歩く高坂文水が、こちらを振り返り浮かべた微笑が気にかかる。そう言えば、瑞月は俺に並びかける前に彼女と話していた。
こちらから訝しく見つめ返すと、彼女はとぼけたように軽く首を振り、先の人込みの最中に紛れていった。
「どういうつもりだ?」
少しいら立って、思わず呟いていた。
やはり、なにか企みがあるのかもしれない。その上で昨日、俺に対してあんな風に接していたのだとしたら、それは当然気分のいい話ではなかった。それまでの彼女に対しては概ね好感を抱いていただけに、尚更なんとも言えないジレンマが募る。
あれこれと余計なことを考えながら歩き続けていると、ふとひと際の涼しさと水の流れ落ちる音を感じ足を止めた。目的の滝の前まで至り、しばし無心で止めどなく落ちゆく水の織り成す景色に集中する。そうしていると、気持ちの方も徐々に癒されるようだった。
いつの間にか多くの観光客に囲まれていることに気づいて、他の四人の姿を探す。一段大きい黄色い声の先を追っていくと、まず夏輝木葉を容易に発見することができた。その付近には、瑞月と高坂文水もいる。