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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第3章 抱かれたい理由
「本当に?」
「特には……。ですが気づいた時には、すぐ傍にいたので……少しだけ、驚きました」
俺は、ため息を吐く。
「こんな場所で、一体なにを考えていたんだか……。やっぱり、ちゃんと文句を言っておくべきかな」
「もう、いいんです」
「だけど――」
「いえ、本当に気にしないでください。それに……たぶん、私の方も悪いんだと思いますから」
「どうして、そんな風に考えるの?」
「そ、それは……」
戸惑ったように再び俯いた松川さんだけど、その様子とは裏腹。袖を摘まんでいた指先が、俺の肌に俄かに触れる。
「……?」
それに、どういう意図があるのだろう。彼女の左手が今度は明確に、二の腕の辺りを撫でてくる。シャツの袖から少し入り、指先は肩口を探るように動いた。
密着した肌と掌の間に、どちらのものとはつかない汗が、じわりと滲む。
「ま……松川さん?」
「はい……?」
思わせぶりに手を動かしておきながら、彼女の表情にはまったくその意が表れていない。無自覚だ。俺に向けた眼差しは、自信なさげにゆらゆらと揺れたまま。見つめ続けていたら、漆黒の瞳の中に吸い込まれそうな錯覚が生じた。
高坂文水のように、ある程度意識的に魅力を操るのではない。夏輝木葉のように、突飛な言動や行動で驚かされるわけでもない。