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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第3章 抱かれたい理由
「そうだね。どの道、余計なお世話だもん。だけどね、これだけは確かだよ。あの子は危うい。とっても、ね」
「危うい……松川さんが?」
高坂さんは頷き。
「管理人さんは、感じなかった?」
そう言い残すと、自分の部屋のある二階へ上がっていった。
書斎で一人になり二時間ほど。キーボードを叩く音が次第に絶え間なくなり、すなわちそれは執筆が乗ってきた証である。正直、書斎に入った瞬間は、そのままベッドに転がってしまいたいという欲求に、負ける寸前であったのだが。
一日を彼女たちの案内役に徹した気疲れと肉体の疲労に加えて、昨夜は寝不足ときている。ふかふかとしたベッドの誘惑は、絶大なものであった。
だが、短い作家修行の中で、自分なりに悟ったことがある。それは、こんな風に疲れている時こそ、無理にでも足掻くことで思わぬ閃きが発揮されることがあるということ。時には行き詰っていた物語の展開が、光に照らされたようにするすると頭の中に降り注ぐような感覚すら得ることがあった。
それがアスリートの言うところの〝ゾーン〟と同義であるのかは判然としないが、とにかく乗らない時ほど無理にでもパソコンに齧りつくのは、そんな理由からだった。もちろん、調子の上がらないまま机に突っ伏していることの方が大半ではあっても。
そういう意味において〝ゾーン〟とまではいかなくても、今日は割と興が乗った部類だ。それでも疲れている分、集中はそう長くは続かなかった。机の端を指でトントンと不規則に叩きながら、ふとパソコンの脇に置いてあるスマホに手を伸ばした。