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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第3章 抱かれたい理由
「アンタに言われたくないけどね」
皮肉を込めてそう呟いてしまったのは、瞬間的に松川さんの存在を失念していたからだ。
彼女は身体を小刻みに震わせながら、俺の背中に、ほとんどしがみついているような格好だ。
「あのさ……どうして、こんなことを?」
そう聞いた後だった。鼻を啜る音を耳にして、俺は焦る。男に言い寄られた恐怖からなのか、彼女は泣き出したようだ。
「あ、いや……じゃあ、とりあえず帰ろうか」
彼女がなにをしようと、それに対し現在の俺がどうこう言える立場ではない。さっき自分で言ったように、俺は「友達の兄」にすぎないのだから――なのに。
「……ごめんなさい」
彼女が涙声で伝えてきたのは、謝罪の言葉だった。そして、頭を俺の背中に押し当てたまま、話を続ける。
「私……あの人でも、いいと思っていました。すがることができれば、相手は誰でも。だけど……お兄さんからメッセージをもらった時、できることならって……」
「できることなら?」
そう聞き返すと、今度は両手を身体に回され、しっかりと抱きつかれていた。
「ま、松川さん……?」
それは、すっかり狼狽えていた俺の態度に相反するようだった。
「お願いです。私を抱いてください」
俺の身体を背後から強く抱きしめたまま、彼女ははっきりとそう言ったのである。