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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第3章 抱かれたい理由


     ◇     ◇

「あ、あの……松川さん。とりあえず、ここじゃなんだから」

 彼女に抱きつかれ「抱いてください」などと言われたのは、ファミレスの駐車場での出来事だ。時間も遅く店には客も少ないとはいえ、人目を心配する必要は十分にある。実際、店が面している国道には、この間も何台もの車が通りすぎていた。

 松川さんを宥めるように先に助手席に乗せてから、車の前を回り込み運転席に乗り込んだ。そうしてドアを閉めて、ふっと一呼吸ついた時だった。

 ――ぐっ!?

 突然、首を引き寄せられたと感じた次の瞬間、俺の呼吸は既に止められていた。苦しく、しかし熱い。彼女の上気した体温が伝わり、唾液に満たされた舌が口腔に滑り込んだ。

「んっ……んっ」

「ちょ、……まっ、……」

 唇の圧力をかわそうとするのに、先回りしたように逃がしてくれない。執拗に迫り、ねっとりと絡みついた。貪りつくような唇に、防戦一方だった。

 しかし彼女たちが来てからというもの、連日このような誘惑(と一括りにはできないが)に遭うのは、一体どういうわけか。俺自身はこれまで女性からモテて困るといった経験は皆無だし、エムっ気があるわけじゃないから肉食系の女子を引き寄せるとも思えない。

 そもそもこの期に及んでも、まだ自分に激しくキスを求める相手が、あの大人しそうな松川さんのイメージと結びつかない。眼鏡の淵は、頻りと頬に押し当たっているけれども。とにかく、この状況をなんとかしなければ――。

「ま――待ってくれ!」

 俺は両手を突っぱねるようにして、強引に彼女の身体を押し退けた。掌には柔らかな弾力を覚えたが、今は気にしてる場合ではない。

「きゃっ……!」

 松川さんは勢い余り、助手席のドアに背中をぶつかると、小さく悲鳴を上げた。

「ごめん! 大丈夫だった?」

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