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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第3章 抱かれたい理由
ラブホテルという場所について、詳しい知識はない。過去に一度も利用したことがないので、当たり前だ。しかしドラマや映画を通じて、なんとなくのイメージくらいは持っている。それだけに不安だった。
バスルームが透明のガラス張りだったり、そもそも仕切り自体がなくベッドと同じ空間に浴槽があったりとか、そんな部屋だったらどうしようと思ったからだが。
「あの……次、シャワーどうぞ」
ほんのりとピンクがかった白のバスローブを身に着け、バスルームから出てきた松川さんが言う。右手で髪を触り、視線はそらしている。
「あ、うん」
俺は頼りない返事をして、所在なくベッドから立ち上がった。彼女とすれ違い、バスルームへ入りドアを閉ざした。
田舎の寂れたホテルの一室は、俺にとりあえずの安心をくれた。少なくともバスルームのドアに嵌められているのは、不透明なすりガラスである。個々に利用する限りプライバシーは保たれるのだ。
もっとも浴室の中で肌色がモザイク状に動いている光景は、想像を掻き立てるには十分なものであり、彼女がシャワーを浴びていた際には、そこから意識を遠ざけるのに一苦労だった。
しかし入った以上は、シャワーを浴びなければならない。これも当たり前だ。そしてシャワーを浴びてしまえば、後にやることは決まっている。これも当たり前なのだろう。
さっき彼女とすれ違う時、そのまま抱きつかれるのではないかと、瞬間身構えていた。ファミレスの駐車場や車の中での彼女の様子を鑑みれば、それも無理もないことだと思われた。
そうならなかったのは、彼女が冷静になった証か。それともここに至って今更、慌てる理由がないということなのか。既に狩りは終わり、後は捕食するだけ――なんて、やはりどうにもわからない。なぜ彼女は、見ず知らずの相手にさえすがろうとしたのか。