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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第4章 かわいい企み?
一時間後――。
結局は彼女たちの意を受け、俺は車を駅に向けて走らせている。しかし、一日中つき合わされた昨日と比べれば、今日は随分と気楽だ。その理由は――。
「やっぱ温泉! ゆっくり何度も浸かって、お肌もツルツルだぁー!」
テンションも高らかに夏輝さんが言った通り、本日の彼女たちの目的地は温泉だ。それも急遽、宿の予約が取れたということで今晩は泊まりだということ。
風情あるお目当ての温泉地は一応県内ではあるが、ここからだとかなり遠い。彼女たちも流石に、車で送ってくれとは言わなかった。すなわち彼女たちを駅に送り届けてしまえば、三日ぶりに一人になれるのである。
「いいなあ。まあ、楽しんできなよ」
相槌のつもりで、なんの気なしに言うと。
「よかったら、ご一緒にどうです?」
助手席の夏輝さんから、そんな風に言われた。
もちろん本気で誘っているわけではあるまいが、それこそ冗談ではない。振り回され続けた三日間の、特にメンタル面でのダメージを少しでも回復するためにも、俺にとってこの一日は貴重だ。
駅に到着して、駐車場に車を入れる。三人を降ろして、そのまま帰ってもよかったのだが、見送りついでに俺も車を降りる。否、そうした理由は、もちろん他にあった。
「あっ、つっちー!」
駅舎の前にいち早くその姿を見つけ、夏輝さんが駆け出していく。俺たちも、その後に続いた。
「着替えとか、テキトーに用意してきたけど」
「うん。ありがとう、木葉ちゃん」
駅で待ち合わせた松川さんとも、当然ながら既に連絡はついていたようだった。その眼鏡越しの視線が、次に俺の方に向けられる。
「……」
彼女の様子が気になっていたのだが、こうして全員の前で顔を合わせても、かけるべき言葉が見当たらない。改めてこうして姿を見ると、やはり昨夜の光景が不可思議に思えていた。
だが、あれは紛れもなく現実である。