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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第4章 かわいい企み?


「……!」

 夏輝さんと話してる最中、不意に視線が合い、柔らかく微笑みかけられた。松川土埜、彼女は一体どう考えているのだろう。あんな一夜の後でどうして、そんな純真そうな笑顔を作ることができるのか。女ってやつが、一気にわからなくなった。

 ふいっと顔を背けた先で、今度は視線が瑞月と重なる。小首を傾げた瑞月から、また視線を逃がしてしまう。怪しく思われるだろ。そう思うのに、今更、取り繕うのも変だった。

「ああ!」

 そんなタイミングで声を上げたのは、高坂さんである。彼女は自分の肩に下げたバッグの中身を忙しく確認していた。そうしてから、俺に顔を向ける。

「管理人さん、悪いんだけどさ」

「なに?」

「ごめーん。車に忘れ物しちゃったかも」

 と、彼女は俺に向かって、おどけたように手を合わせた。

「ああ、じゃあ――」

 俺は高坂さんを促すと、駅のロータリー内にある駐車場の方に戻って行く。車のロックを解除して、彼女が乗っていた後部座席のドアを開けた。すると、その時――。

「うわっ――な、なに?」

 背中から強く押され、前のめりに後部座席のシートへ倒れ込んだ。

「いいから、さっさと入って」

 そう言って俺のケツを叩き続いて車に乗り込むと、高坂さんはスライドドアを素早く閉ざした。

 俺がシートに寝転ぶように身体を反転させ、彼女に文句を言おうとした時である。

「ちょっと、――」

 ――なにをするんだよ? と、言いかけたその問いを口にするべきタイミングは、たぶんこの後の方が適切だろう。

 なぜなら今の俺は、高坂文水に唇を奪われている最中だった。時間にして、ほんの三秒。ちゅっ、と軽い音を最後に残し、彼女は唇を離した。

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