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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第4章 かわいい企み?
車を降りみんなのところに戻る時、高坂さんは言う。
「松川さんは、たぶん――私と同じかな」
「同じ?」
「うん。なんとなく、そんな気がするの」
「それって、どういう意味?」
「さあ? 私にもわからないけどさ。それでも、これだけは言える」
「なに?」
「大変だよ、きっと。管理人さんは、ね」
「……」
どう大変なのか正しくはわからないが。もちろんわかっていることだってある。既にいろんな形で、彼女たちは俺の心をかき乱してくれた。なにかに、巻き込まれつつあることぐらいは予感している。
現状の把握と対策、なによりも自分の精神を立て直すためにも、とにかく今は一人になりたい。幸い彼女たちは、これから四人で温泉に行くという。
一応はもう一度、瑞月たちのところまで行き「じゃあ、気をつけて」とだけ告げて去ろうと思ったのだが。
「ダメです! ちゃんと、お見送りしてくださいよー」
「いや、必要ないだろ」
「いいから、お兄さんも来てください」
と、夏輝さんに手を引かれ、そのまま駅舎の中に連れ込まれた。結局はわざわざ入場券を買って、ホームで四人と一緒に電車の到着を待つ流れになった。
そうして、ホームに目的の電車が滑り込み、その扉が開いた時である。
「瑞月?」
どうして、そうなったのだろう。まるで、わからない。少なくとも、朝にはそれなりに機嫌がよかったはずだ。
「私……」
既に他の三人は電車に乗り込んでいる。それなのに瑞月だけが、俯いたまま暗い表情で立ち竦んでいた。
電車を待つ間、夏輝さんと楽しそうに話していたから?
高坂さんと車に行って、なかなか戻ってこなかったせい?
意識しないと思いつつ、しらずしらず松川さんを気にかけたから?
そのすべてか、あるいは別の理由かもしれない。とにかく、瑞月の機嫌が一気に悪化したのは確かのようである。その証拠に――。
「……私、やっぱり行かない」
瑞月はそう言うと、手にしていた荷物をホームの上に落としてしまった。