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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第4章 かわいい企み?
放課後、瑞月はいつだって校門のところに立ち尽くすと、俺が来るのを待っていた。やがて迎えに来る黒塗りの車の後部座席に、俺と一緒に乗り込むため。そしてその後はドアツードア。俺たち兄妹は、タワーマンションのエントランスへと送り届けられていく。
それでも低学年の頃は、今日は誰々とこんなことをして楽しかっただとか、たわいもない一日のことを車内で俺に話して聞かせた。だが徐々にそんなことも減ると、瑞月は只黙って俺の横に座っているだけになっていった。
校門で俺を待っていた横顔が、丁度今の瑞月と重なっている。でもあの頃は、俺が行くと、一瞬ではあったけど微笑んでくれた。ほっと胸を撫で下ろしたような、そんな笑顔である。送迎の車ではなく、瑞月は確かに俺のことを待っていてくれたのだ。
では今、どうしたら瑞月は俺に微笑みかける?
「べ……別荘に帰っていいのか?」
無駄に緊張して、言葉が上擦ってしまった。妹の機嫌を窺っている自分が情けなく、自然に話せていた頃が、遥か昔のように感じられた。
「他に行くところあるの?」
「別にないけど……せっかくだから、なにか食ってくとか?」
「いい、食欲ない」
「そっか……」