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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第4章 かわいい企み?
まったく意外な展開である。こんな形で瑞月と二人きりになるなんて、昨日までは思いもよらなかった。高熱を出し倒れた時は焦ったが、医者にも診せたことだし薬を飲ませて安静にしていれば、ほどなく回復するはずだ。
沸騰しはじめた土鍋の蓋を取ると、湯気がふわっと立ち込める。その熱気を素肌に感じて、なんとなく鼻歌でも奏でたい気分になった。
そう、悪くない気がしている。こんな風に瑞月の世話を焼けることを、兄として。瑞月を置いて家を飛び出しておきながら、勝手だと思われるかもしれない。
だけど、気にかけていないはずがない。離れた後も、ずっと。どんなにつれなくされようとも、やはりたった一人の妹なのだ。
部屋にお粥を持って行くと、幾分火照った顔をしながらも瑞月は自分の力で身体を起こしている。
「お粥作ったけど、食べられそうか?」
「うーん、どうだろうなあ」
布団の横に置いたお盆の上の土鍋を見つめながら、瑞月はぼんやりと言う。
「まだ、食欲がわかないか。それなら、メロンとかゼリーもあるけど。少しでも食べないと、薬も飲めないしな」
「だけど、いざとなったらアレがあるでしょう」
瑞月はこほこほと小さな咳を零しながら、なぜか笑っている。
「アレとは?」
「ほらぁ、下からのやつ」
思わせぶりに言われて、俺も気づいた。どうしても食べられない時用の解熱剤として、確かに座薬も処方されてあったけども。
「熱、まだ辛いのか?」
「うん、結構」
「じゃあ、座薬を試してみる?」
「でも、使ったことないしぃ、なんとなく抵抗もあるしぃ。だからさぁ――」
瑞月は甘えた口調でそんな風に言った後、顔を寄せ耳元でささやきかけるように言った。
「――ねえ、お兄ちゃんが入れて」
「バ、バカ! お前――」
驚いて見つめ返すと、瑞月はクスクスと楽しそうに笑った。
「フフフフ、冗談だよ。本気でそんなことさせる妹が、この世にいるわけないから」
そ、そうだ。漫画やアニメじゃあるまいし、現実の場面でそんなことが行われるわけがない。そんなこと、すなわち――。