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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第4章 かわいい企み?


 刹那、鏡を通じてふっと微笑を向けた後で、瑞月は俺から視線を外し静かに話しはじめた。

「私さ……中学くらいまでは、なんていうか、クラスの中で浮いていたの。そういうの、わかる?」

 背中を洗う手を再び動かしながら、俺も話に応じる。

「ん、まあ……やっぱり、親父たちのせいか?」

 瑞月は「うん」と頷く。その首筋から肩口の辺りに、所在なくタオルをあてがいながら、続きの言葉を待つ。

 髪を上げたうなじの、生え際の不揃いのラインと、染め髪と黒髪のグラデーションを、なんとなく見つめていた。

「別に、恨むとかじゃないけど。ほら、中学に入ったばかりのころ。お父さんとお母さんのことで、クラスの男の子にいじめられたって話、前にしたでしょ」

「ああ、憶えてる」

 当時の親父は、いわゆるIT業界の寵児として注目を集めはじめていた。実業家としての半生は、まさに順風満帆。若くして新たな時代の波を掴むと、一代で巨万の富を築いてしまったのだ。

 後にはあり余る資金を活用し、プロスポーツ界への参入や、芸能プロダクションの設立等を果たし、その活動は多岐に及ぶことになる。昨今でこそEC事業で海外企業に押されっぱなしの印象は否めないが、二十一世紀に入ってからの十年の勢いは、すさまじいものだったという。

 そんな親父が、まだまだ駆け出しの時代に出会ったのが、人気モデルとして活躍していた逢坂葉月(あいさか はづき)。すなわち瑞月の母親である。当時、逢坂葉月は瑞月を身ごもっていて、お腹の子の父親は当時付き合っていた恋人だった。

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