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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第4章 かわいい企み?
一度はその恋人と婚約関係を結びながらも、瑞月が生まれる数か月前というタイミングで、なぜか婚約を破棄。そしてその直後、逢坂葉月が結婚した相手が、俺の親父だった。二人が結婚した当時、俺は一歳になる前であり、瑞月はまだ生まれてさえいなかった。
そんな経緯や取り巻く状況から、二人の結婚が世間からセンセーショナルなものとして受け止められたのも自然なことだろう。週刊誌の記事を中心として、様々な憶測が飛び交う結果になったのである。
当時の二人がどのようにして結ばれるに至ったのか、俺と瑞月がその経緯を正しく知る術はなかった。そもそも親父たちは、俺や瑞月になに一つとして語ろうとはしなかったのである。普通の兄と妹として、俺たちは育てられていった。だが、違和感は次第に膨らむことになる。母親からの愛情を、俺はほとんど感じることはなかったから。
ネットで探し当てた当時の記事を、親父の前に突きつけたことがあった。その時は反感や非難の気持ちからではなく、純粋に説明してほしいと願ったのだ。記事を鵜呑みにしたくない理由もあった。俺にとって特に看過できないのは、俺を産んだ実の母親に対する部分だった。
しかし親父は記事を一笑に付すと、今更くだらない過去を持ち出すな、と俺を叱った。以後、それを口にする度に、冷ややかに俺を跳ねのけていた。俺は次第に、親父に対する反感を強めることになった。
記事のことは瑞月には話さなかった。瑞月は、いつだって素直だったから。両親に対しても、俺に対しても。なんの疑問もなく幸福を享受する瑞月に、自分と同じ気持ちを味合わせることを激しく躊躇したのだ。
しかし殊に思春期を迎えたころからは、平静としてはいられなかったようだ。瑞月は瑞月で、真実と向き合わなければならなくなる。学校のクラスメイトに親父たちの記事を見せられ、その内容を元に中傷を受けたという。その時の気持ちは、果たしてどんなものだったのか?