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妹やその友達と、いろいろあったアノ夏のコト
第1章 夏のはじまりは刺激的に
「あの――」
「なにか、足りない?」
「いえ、そうではなくて。その……さっきは、どうして私の方を選んでくださったのですか?」
「どうしてって、別に……」
その二択のことなら、はっきり言ってしまえば消去法だ。明るくていい子なのはわかるが、テンションの高い夏輝さんでは相手をするだけで疲れてしまう。殊に俺のように孤独を愛する人間にとっては、そうなのだ。
その点、松川さんなら黙々と作業してもらえそうだったから、と理由はそれだけなんだけど、流石にそのまま伝えるわけにはいかないだろう。
「なぜ、そんなこと聞くの?」
「だって……普通は誰でも、木葉ちゃんの方がいいに決まっていますから」
「いや、それは人によるんじゃないかな」
「いいえ、絶対そうなんです。木葉ちゃんは明るくて、かわいいし――ううん、木葉ちゃんだけじゃありません。瑞月ちゃんは、もちろん。文水さんだって、すごく綺麗な人ですし――なのに、私だけが」
「あの……松川さん、一体どうしたの?」
急に興奮を露わにした彼女は、今にも泣きだしそうな顔を俺に向けた。
「ご、ごめんなさい……」
「いや、いいんだけどさ」
「私、自分に自信が持てないんです。だから、なにか上手くいきそうになった時でも、つい不安になってしまって……。コンタクトが苦手だから、今時こんな度の強い眼鏡をかけて、みんなに比べてあか抜けなくて地味なのはわかってるんです」